ドクターMの回想録
16.ERシリーズ(その2)
当時勤務していた病院は土地柄外国人就労者の方々も多く、頻繁に工場での事故で搬入されてきました。多くは東南アジア系の方々ですが、たいていは日本語、英語とも通じません。
その晩搬入されたのは中国系の方でした。猛烈な腹痛を訴えていましたが、仕事の関係で入院などはしたくないようでした。 触診すると腹部に筋性防御もあり、聴診では腸管の動きも止まっているようです。エコーを撮ると虫垂に腫れがあり、虫垂炎からの腹膜炎を強く示唆されます。 もちろん日本語は通じませんし私の中国語はニーハオくらいしか知りません。でもかの国は漢字がわかるので助かります。
「我思症状之汎腹膜炎也。保存的経口的治療奏功不能。為有死的可能性即手術不可避。」
訳のわからんでたらめ漢字の羅列ですが、手術には同意して頂きました。